泣ける推理小説

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推理小説の醍醐味といえば、ハラハラする展開とトリック、個性的な探偵、謎解き、意外な新犯人。

でも、実は泣ける推理小説も存在するのです!

ハラハラ、ドキドキのミステリーを読みながら、同時に泣いて感動できる!
まさに一石二鳥、一冊で二倍美味しい、といえます。

推理小説作家は、ストーリーを紡ぎだす名手です。
泣ける展開だって、純文学作家に負けていません。

いくつか思いつくものを挙げてみます。

■『人間の証明』(森村誠一)
日本に母を訪ねた黒人混血青年が殺害されます。母を慕う子供の心が泣ける傑作です。
人間の証明新装版 [ 森村誠一 ]

人間の証明新装版 [ 森村誠一 ]

■『青の炎』(貴志祐介)
家族思いの主人公の高校生が、母や妹のために父親を殺害する、というストーリーです。最初に犯人がわかっているタイプの推理小説です。犯人を応援したくなります。映画では主人公を二宮和也が演じました。

青の炎 [ 貴志祐介 ]

青の炎 [ 貴志祐介 ]

■『飢餓海峡』(水上勉)
凄惨な殺人事件の背後の貧困や人間の哀しさを感じさせる、社会派の傑作です。映画も素晴らしかったです。

飢餓海峡(上巻)改版 [ 水上勉 ]

飢餓海峡(上巻)改版 [ 水上勉 ]

■『容疑者Xの献身』(東野圭吾)
人気作家東野圭吾の人気シリーズ、ガリレオシリーズの長編で直木賞受賞作。映画化もされています。
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容疑者Xの献身 [ 東野圭吾 ]

■『半落ち』(横山秀夫)
アルツハイマー病の妻を殺害した元警察官をめぐるストーリー。淡々とした筆致で物語が進みますが、最後の3ページは号泣必至。人間愛に打たれます。

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半落ち [ 横山秀夫 ]

この中から、今回は人気作家の東野圭吾の作品を取り上げてご紹介いたします。
この作品はいやしこむの「思い出の本」アンケートで9位に入ったおすすめの推理小説です。

(思い出の本に関するアンケート大調査の結果についてはこちら→ http://iiiyashi.com/024/

ミステリー小説で泣ける本!話題の泣ける推理小説『容疑者Xの献身』

Erin Stoodley

(出典:Erin Stoodley Creative Commons)

物理学者の湯川学が活躍する大人気ガリレオシリーズの長編です。

読者に犯人が最初からわかっている設定ですが、展開がうまい!
ハラハラ、ドキドキ、ストーリーに酔いしれることができます。

さらに、この作品は泣けます。
報われない相手に愛を捧げる犯人(隠匿者)の深い愛情に心を揺さぶられずにいられません。

普段推理小説はちょっと、という方にもおすすめです。

ミステリー小説で泣ける本!話題の泣ける推理小説『容疑者Xの献身』のあらすじ

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天才物理学者湯川学と、大学時代机を並べた天才数学者の石神。

彼はずば抜けた天才でありながらも、大学院進学後に不遇にあい、今はうだつのあがらない高校教師として数学を教えています。

本来は研究者として業績を積み重ねていたはずの石神。
でも、生きる目標を失っています。

そんな彼の安アパートの隣に引っ越してきたのが、美しい母親と中学生の娘の親子でした。

張り合いのない日常を送っていた石神の生活に、楽しみができます。

石神は恋心を抱く隣の母親と結ばれたい、とは思いません。
自分が手を出せる存在ではないのだ、と。

彼は窓を開けた時にかすかに聞こえる声だけで満足しています。

そんなある日、隣に住む親子のもとを、離婚した夫が訪れます。

美しい母親は、その元夫から離婚後も金をせびりとられ、必死に逃げていたのでした。

でも、また元夫に見つかってしまった…。

絶望し、お金を渡した母親。

その時、娘が元夫を後ろから殴りつけます。

激怒する元夫。
のっぴきならない事態になった二人は、元夫を殺害してしまいます。

二人が途方に暮れたところを、助けたのが隣に住む高校教師の石神でした。

数学の天才と呼ばれた頭脳を駆使して、完璧な証拠隠滅とアリバイ作りをする石神。

計画は、石神の想定したとおりに進みます。

そうです、警察では石神の頭脳には敵わないのですから。

でも、想定外の事態が起きます。

大学時代に石神の唯一の友達だった天才物理学者湯川の出現です。

湯川はガリレオシリーズの主人公として数々の難事件を解決してきた天才です。

そして、石神が恋する美しい母親(犯人)に、恋人候補とも言える人物が現れます。

天才VS天才の知恵比べの行方は?

そして、湯川により明らかになる石神の究極の愛が明らかになる結末に心を動かされずにいられません。

 

ミステリー小説で泣ける本!話題の泣ける推理小説『容疑者Xの献身』の泣けるポイント

金髪の女の子

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石神は真面目で実直な人物です。

数学の天才でありながら、恵まれない人生を送ってきました。

そんな人物が恋をします。
生まれて初めての恋。

初めて味わう幸福な気持ち。。。

愛する相手が苦境に陥った時、石神は自分の人生を捨ててまで、全てを投げうって相手を救おうとします。

その姿が泣けるのです。
どんなに報われなくても、全てを捧げる姿が、読者の胸を打ち、泣けます。

恋とは本来自己中なものです。
セルフィッシュじゃない恋愛なんてありません。

石神も、美しい母親とデートし始めた男に深く嫉妬します。

でも、親子への愛情は変わりません。

深い深い愛情。

でもとっても好きなのに、でも「自分なんか触れてはいけない存在だ」と思っている石神は
想いを伝えたいとすら思いません。

その石神の気持ちが私にはよくわかります。

思いをよせる人がいても、自分なんかじゃ釣り合わないな、と言えないことだってあります。

人生で告白できたことが一回しかない自信のない私には、「自分なんか」と思う石神の切なさがわかります。。。

一緒に話せればいい、声が聞ければいいという石神は、ただひたすら親子の幸せを願って自分を犠牲にするのです。

石神がどれほど大きな犠牲を払ったかは、結末で明らかになります。

誰にも気づかれなかったであろうその犠牲を湯川が明らかにする時、本当に泣けます。

東野圭吾の描いたこの愛は深く、哀しいものです。

でもミステリーを読みながら、純愛小説を読むように泣ける小説です。

推理小説としてのおもしろさも一級品!!

泣ける純愛ミステリー、ぜひご一読ください。

ちなみに、私が読んだ本の中で一番大きな自己犠牲を払った男性は、『二都物語』のカートンです。

カートンは、好きな女性が愛する自分とそっくりの男性の身代りになって、ギロチンにかけられてしまうんです。

衝撃的でした。

チャールズ・ディケンズのこの作品も、本好きの方はぜひお読みください。

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吉乃川なつ

吉乃川なつ

本とお酒が大好き! 本は小説からビジネス書、マンガまで前に出されたら何でも読んじゃいます。お酒もビール、日本酒、ワイン、すべて愛しています。 人生や仕事に疲れたみなさんに、ホッと安らげるような記事をご提供できればと思います。