(出典:photo by ecowa クリエイティブコモンズ)
あなたが学校・職場の人間関係に疲れたのはきっとあなたがいい人だからです
もし今あなたが学校・職場の人間関係に疲れたのなら、きっとあなたはいい人なのでしょう。
みんなに気を使いながら生活しているため、ストレスで疲れたのだと思うからです。
気を使っているのはあなただけではありません。
私もそうですし、誰でも、大なり小なり人に気を使いながら生きています。
それは悪いことじゃありません。
でも、あなたが疲れたのは気を使いすぎなのかもしれません。
学校・職場の人間関係に疲れたら、生き方を変えた方がいいのかもしれません。
いつも人の顔色を窺ってきた人に、「他の生き方もありますよ」と言っても、どんな生き方があるのか分からないですよね。
じゃあその他の生き方ってどんな生き方なのだろう?という方に、どんな生き方があるのかヒントを示してくれる本を、これまでに1,000冊の本を読んできた私が3冊ご紹介します。
なんで人間関係に疲れたのだろう?学校・職場の人間関係に疲れるのは当然なんです!
(出典:photo by Dai Luo クリエイティブコモンズ)
現在の人類がここまで進化した最も大きな要因は何だと思いますか?
唐突に話が変わったようですが、ちょっと考えてみてください。
火を使うようになったことでしょうか?
二足歩行でしょうか?
言葉でしょうか?
色々な考えがあると思います。
京都大学の総長で霊長類を研究している山極壽一さんはゴリラやチンパンジーと比べて、人間がここまで進化したのは、
「地域や集団単位で一緒にご飯を食べるようになったこと、子どもを育てるようになったことが最も大きな要因だと思う」と、NHKの『SWITCHインタビュー 達人達』という番組で話されていました。
人間がここまで進化した理由は、家族だけではなくもっと多くの人たちと社会生活をともにしたことにあったのです。
人間は多くの人と接しながらも、喧嘩だったり、乱交だったり、個体間に順位をつけたり、子ども殺しだったりをほとんどすることなく生活しているすごい生き物なんです。
ここに挙げたことをチンパンジーはどれもしています。
たとえば、チンパンジーは20~100頭ほどの群れで行動しますが、群れと群れは敵対関係になります。オスは喧嘩して死んでしまうので、成獣になる頃には半分になってしまいます。
こういったことを一つもせずに集団生活を行える動物は人間だけです。(たまに喧嘩したり、戦争したりしてしまいますが)
同じ種であっても、動物が集団で平和に暮らしていくことはとても難しいことなのです。
人間にしかできない高度なことなのです。
そんな難しいことをしているのだから、そりゃ人間だって疲れるはずですよね。
人間は多くの人と社会生活を築けるように、他人を傷つけないようにすることを学びました。
そうすることで進化してきました。
他人を傷つけないようにすることは、時に我慢することであり、自分を押し殺すことでもありました。
その結果、人間はどこまで自分を押し殺せばいいか分からなくなってしまったのです。
我慢ばかりするようになり、自分を表現できなくなってしまったのです。
これまで知識を蓄積したり、計算作業を行ったり、単純な物を作る製造工程に携わったりしてきた人たちに、パソコンや機械がもっと効率良くその作業はやるから、あなたたちは想像力を発揮するように、個性の時代だからと言われても困ってしまいますよね。
それは個性がないからではありません。
個性のない人間などいません。
個性を表現することが難しいのです。
個性を表現することと、社会生活を平和に過ごすことは、ともすると矛盾しかねなかったからです。
特に日本人は狭い国土しかない島国なので、色々なことですぐ他人とぶつかってしまいます。
だからこそ民族的にも余計に遠慮深い性格になっています。
日本語が遠回しな表現になっているのもそのためです。
現代の人間が疲れるのは当然です。
もともと他の生物にはできない難しい社会生活を営んでいる上に、
個性を発揮しながら社会生活を営むという、ともすると矛盾する課題を現代では迫られているからです。
その証拠に、個性的な人ほど社会への依存度は弱い傾向にあるはずです。
社会からのしがらみが少なければ、人は自分を表現しやすくなるのです。
学校・職場など社会生活で人間関係に疲れる人はどんな人なのか?
私はきっと我慢してしまう人ではないかと思います。
自分を押し殺して、自己表現することをしない人ほど疲れるのではないでしょうか。
私が人間の進化なんて、ややこしいことを持ちだして伝えたかったことは二つです。
・学校・職場の人間関係に疲れるのは、元々難しいことをしているのだから当たり前なんだということ
・我慢しすぎるのも人間らしい難しいことで、それ自体決して悪いことではないはずだということ
だから、あなたが学校・職場の人間関係で疲れたのは、決してあなたが悪いからではありませんと伝えたかったのです。
むしろあなたはより進化している人間かもしれません。
それでも、他にこんな生き方もあるんだなというヒントのために、3冊の本を紹介いたします。
学校・職場の人間関係に疲れた方におすすめの本『自分らしく生きたかったらエゴイストになりなさい』 ヨーゼフキルシュナー
(出典:photo by miggslives クリエイティブコモンズ)
私がこの本を読んだのは大学生の頃です。
タイトルの「エゴイストになりなさい」というインパクトある言葉に惹かれ、本を手に取ったからです。
著者には多数の著作があり、世界12カ国で読まれています。
本の帯には、
『「生き方、変えなきゃな」と思ったら… 他人の評価にびくびくして生きるのはやめて、ありのままの自分を大事にしよう! 世界的な人気を誇る文筆家による新しい自己中心主義のすすめ!』とあります。
本を読んだ人のレビューを見てみると、
“周りの人の評価や目線を気にしている人は、この本を読んで「自分というものを最高に尊敬する、他人の評価など必要ない」生き方を実践してみてはいかがでしょうか。いつでも自由で幸福な人生の達人になりたい人は必読の本です。”
“読んでいると人間関係のストレスがとれていくような錯覚をおこします。とてもすばらしい本だと思います。”
“この本を読んだおかげで、目の前が、さっと開けた気がした。まさに、名著中の名著。”
いずれもamazonのレビューから引用
この本はレビューにもあるとおり、読んでいると不思議と楽な気持ちになれます。
人間関係に疲れた自分が嘘のような気がしてきます。
人はいつのまにか自分はこういう生き方しかできないと固定観念のようなものに縛られてしまうものです。
私も同じです。
知らず知らず、自分にはこういう生き方しかできないと決めてしまっています。
でも、本当にそうなのでしょうか。
他にも、生き方なんてたくさんあります。
あなたにできる生き方があるはずです。
あなたは自分のしたいように生きるのではなく、誰かの期待に沿って生きていませんか?
本当にいつのまにか、あなたはあなたの望んだ生き方ではなく、他人から期待されている生き方をしてしまうのです。
あなたが本当に望んでいた生き方はどんな生き方ですか?
固定観念の檻の中から、この本はあなたを救出してくれるかもしれません。
自分はもっとこんなふうに生きたい、その生き方は実現できると読んでいるうちに不思議に思ってしまう本です。
実際に目の前の現実はすぐには変わらないかもしれません。
でもきっと読んだら、あなたの心は読む前より確実に軽くなり、晴れやかになっているはずです。
<本データ>
『自分らしく生きたかったらエゴイストになりなさい』
ヨーゼフ・キルシュナー
瀬野文教[訳]
草思社
205ページ
2000年9月発売
本が苦手な人の読みやすさ★★★★★
おすすめ年代 10代~60代
おすすめ性別 どちらも
<著者プロフィール>
ヨーゼフ・キルシュナー
1931年生れ。記者、雑誌編集長、広告代理店勤務などを経て、コンサルタント。これまで執筆した多数の著作は世界12カ国で出版され、計1800万部以上売り上げている。
邦訳に『人に振りまわされずに生きる13の法則』(主婦の友社)がある。
<訳者プロフィール>
瀬野文教(セノ・フミノリ)
1955年東京生れ。北海道大学独文科修士課程卒。DAAD(ドイツ学術交流会)給費生としてケルン大学に留学。ドイツ語塾トニオ・クレーガーを経営。
訳書に『日本人の忠誠心と信仰』『黄禍論とは何か』『アタマにくる一言へのとっさの対応術』(いずれも草思社)がある。
学校・職場の人間関係に疲れた方におすすめの本『自分の中に毒を持て』岡本太郎
(出典:photo by Sxld クリエイティブコモンズ)
岡本太郎さん、多くの人が名前は聞いたことがあると思います。
太陽の塔を作ったのは知っているけど、他の作品は知らない。
エキセントリックな芸術家で、ちょっと変わった人というイメージの人が多いのではないでしょうか。
私もそうでした。
なんか何を考えているかよく分からない変人。。。失礼ながら、そんなイメージでした。
今はちょっと違ったイメージを持っています。
そのイメージが変わった理由が岡本太郎さんの本を読んだからです。
本を読むと、岡本太郎さんがただの変人ではなく、しっかりと物事を考え、葛藤しながらも信念を持って集団や社会と闘い、ひいては自分と闘っていたのだなということが分かります。
ただの変人ではありません。
すごく勇敢で、頭のいい人だったんだと感じました。
岡本太郎さんは第二次世界大戦では兵役で戦争に行っています。
1942年のまだ戦況がそれほど悪くない頃から、アメリカやイギリスのような大国と戦争すれば負けると考えていたようです。
先を読む大局観のようなものも持っていたんですね。
岡本さんが葛藤しながら集団や社会と闘っていた中で、生まれてきた名言には心を打たれるものがあります。
「危険な道をとるか、安全な道をとるか。迷ったら、危険な道をとる!」
「他人と同じに生きてると自己嫌悪に陥るだけ」
「自分を殺せ!」
「自分を殺せ!」とは、常に今の自分に安住せず、過去の自分を殺し生まれ変わるように成長し続けろってことです。
岡本太郎さんの過激で奇抜な名言は、深く悩み考え抜いたバックグラウンドがあってこそのものです。きちんとした裏付けがあります。
常識人間を捨て、真に自分らしく生きることを情熱的にどこまでも追求した岡本太郎さんの言葉は読む人にも訴えかけるものがあります。
そんな熱さを自分の内に取り込んでみるのもいいかもしれません。
自分を変えるのは楽なことではありません。
変えるためにはきっと情熱が必要です。
この本を読んで、岡本太郎さんの情熱を感じてみてはいかがでしょう。
不思議とあなたの心も元気になってくるはずです。
安藤美冬さんはこの本を読んで、会社を辞めたと聞きました。
また、この本を読んで岡本太郎さんに興味を持った方は、青山にある岡本太郎記念館や川崎市にある岡本太郎美術館に行ってみるのもおすすめです。
私も岡本太郎記念館には行ったことがあります。
岡本太郎さんの住居兼アトリエだったところが一般公開されていて、今もアトリエには絵画の道具や作品が残されています。
岡本太郎さんの息吹や生命力、気配のようなものまで感じられるようで迫力がありました。
今度は岡本太郎美術館にも行ってみようと思っています。
<本データ>
『自分の中に毒を持て』
岡本太郎
青春出版社
218ページ
1993年8月発売
本が苦手な人の読みやすさ★★★★
おすすめ年代 10代~
おすすめ性別 どちらも
<著者プロフィール>
岡本太郎(オカモト・タロウ)
1911年(明治44年)神奈川県生れ。芸術家。積極的に絵画・立体作品を制作するかたわら、縄文土器論や沖縄文化論を発表するなど文筆活動も行った。1996年(平成8年)満84歳没。
代表作は『傷ましき腕』『明日の神話』『太陽の塔』など多数。
学校・職場の人間関係に疲れた方におすすめの本『カイン』中島義道
(出典:photo by anieto2k クリエイティブコモンズ)
著者は東京大学卒の哲学者です。
少年・青年時代には弱い人間で、たいへん不幸であり、ほとんど死ぬ瀬戸際をさまよっていたと語ります。
そんな弱い人間であった著者が30年にわたり努力してきた結果、たどり着いた境地やその過程について教えてくれるのがこの本です。
この本の面白いところの一つがその過程を修行と捉えていることです。
修行すれば強くなれるんです。
タイトルになっている『カイン』とは、
“『旧約聖書』に出てくるアダムとイブの子どもで、アベルという弟がいます。
嫉妬にさいなまれ弟のアベルを殺し、その後に神様からアベルの居場所を問われたときに「知らない」と嘘をつきました。
世界で初めて殺人を犯し、世界で初めて嘘をついた人物であるとされています。”
出典:ニコニコ大百科(仮) http://dic.nicovideo.jp/
この本の著者も岡本太郎さんのように過去の自分を殺してきたと語ります。
自分を殺すことによって、生き延びてきたと。
決して自殺のことではありません。
この本は「どんなことがあっても自殺してはならない」と訴えています。
あとがきに代えてという段落で、著者はこう綴っています。
「ぼくは、人間は成熟することによってけっして美しくはならない、という信念をもちつづけてきた。むしろ、成熟することは醜くなることなんだ。成熟するとは、生きる技巧を身につけることでもあり、人生に鍛えられあきらめることでもあり、自分の乏しい資質を自認することでもあり、それでもなお生きることに執着することでもある。つまり、堕落することなのだ。」
私はこの文章がとても印象的でした。
こういう感覚の人がいかに堕落していく自分を許してきたのか、変容して生き延びてきたのか知ることは参考になると思います。
「最も強い者が生き残るのではない。最も賢い者が生き残るのでもない。ただ変わり続けられる者だけが生き残ることができる」とは、ダーウィンの『種の起源』での言葉と言われています。
状況の変化に合わせて、自らも対応を変えることができる者だけが生き残れます。
時に、その変化は不様で醜いものかもしれません。
それでも生き延びましょうよ。格好悪くたっていいじゃないですか。
自分が堕落することを許せない潔癖症の人は命を落としかねないのです。
そういう人で思い付くのが、村上春樹さんの『ノルウェイの森』に出てくるキズキや直子です。
若くして命を失う芸術家なんかにも、そういう人がいるでしょう。
彼らは潔癖だったため、自分が変わっていく醜さを受け入れられなかったんですね。
この本は弱い人に寄り添ってくれる本です。
もしあなたが学校・職場の集団生活に疲れたのは自分が弱いからだと思っているなら、きっとあなたを癒やしてくれる本です。
おすすめなので、読んでみてください。
<本データ>
『カイン』
中島義道
講談社
221ページ
2002年1月発売
本が苦手な人の読みやすさ★★★★
おすすめ年代 10代~
おすすめ性別 どちらも
<著者プロフィール>
中島義道(ナカジマ・ヨシミチ)
1946年(昭和21年)福岡県生れ。哲学博士。元電気通信大学教授。専攻は時間論、自我論、コミュニケーション論。
著書に『ウィーン愛憎』(中公新書、角川文庫)、『〈対話〉のない社会』(PHP新書)、『孤独について』(文春新書)など多数。