あなたは母親が好きですか。
私はこんなところで書くのもなんですが、母親のことが好きです。
恥ずかしいですね。面と向かっては中々言えないので、こんなところにこっそり書いておきます。
あなたは母親のありがたみを日頃から感じていますか。
お母さんって、ありがたい存在です。
そんな母親に親孝行できていますか。
私は18歳で東京に出てきて一人暮らしを始めました。
一人暮らしをしてすぐにホームシックにかかりました。
1Kの狭い部屋でぽつんとしているとどうしようもなく寂しくなりました。
ろくに料理をしたこともなくて、スーパーでお惣菜を買ってきて小さいテーブルで食べても、会話のない虚しい食事は美味しく感じませんでした。
夜になってくるとますます寂しくなって、高校の同級生に電話して長話に付き合ってもらったのを今でも覚えています。
一人暮らしをして本当に家族のありがたみがよく分かりました。
今まで自分がいた場所はなんて温かな場所だったのだろうと。
家事を自分でしなければならない状況を経験して、特に母親のありがたみがよく分かりました。
(父親のありがたみは社会人になって働き始めてからよく分かりました。)
そんな一人暮らしを始めて母親のありがたみを感じ始めた人にも、
実家暮らしで母親のありがたみになかなか気づけない人にも、
みんなに読んで欲しいおすすめの小説があります。
2006年第3回本屋大賞にも輝いたリリー・フランキーの『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』です。
母親の愛の深さに涙するおすすめ小説
多くの人にとって、自分が何の不安もなく最も愛されていると感じられる存在が母親ではないでしょうか。
著者のリリー・フランキーさんはイラストレイター、コラムニスト、エッセイスト、デザイナー、俳優などいろんなジャンルで活躍しています。
私は大学生の頃からリリー・フランキーさんのファンです。
雑誌のエッセイで見せる、ユーモアとただエロいだけではない変態さに魅せられていました。
くだらない話ばかりなんだけど、ちょっと他人には引かれてしまいそうなことまで堂々と書いてしまうところに、我が道を行く孤高の精神を感じていました。
そんなエロくて、くだらなくて、素晴らしいエッセイを書くリリー・フランキーさんが
エッセイとはまったく異なる雰囲気の小説を書かれました。
その小説が『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』です。
母と息子の人生が描かれた切ない小説です。
母親の愛に涙が止まらない本『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』あらすじ
この小説はリリー・フランキーさんの自伝であり、私小説です。
リリー・フランキーさんが生まれてから、リリーさんのお母さんが亡くなるまでを書いた小説です。
北九州の小倉で育ったリリー・フランキーさん。
お父さんはたまにしか帰って来ないので、お母さんと一緒にいる時間が長かったようです。
リリー・フランキーさんのお母さんは肝っ玉母ちゃんといった印象。
働き者で、愛情深くて、やさしくて、あったかい。
男の子はみんなお母さんにべったりな時期があって、憎まれ口を叩くようになり、親をうとましく感じるようになって、親元を離れていきます。
そして親のありがたみを知っていきます。
ようやく一人前になったかなという頃には、親も老いてきます。
その時、親に何をしてあげられるかというのは、誰にとってもいつか訪れる問題です。
都会で一人暮らしをしているリリー・フランキーさんは老いて弱ってきたお母さんを東京に呼び寄せ、二人で一緒に暮らします。
つかの間の幸せな生活の後、リリーさんのお母さんは病気になります。
次第に弱っていくお母さんとリリー・フランキーさんのやり取りが泣けます。
リリー・フランキーさんはお母さんの死を看取ります。
この経緯を、無駄のない言葉で、印象的なシーンばかりで紡いだのがこの小説です。
母親の愛に涙が止まらない本『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』共感ポイント
誰もが共感できる小説だと思います。
誰にとってもお母さんという存在は特別です。
お母さんのお腹の中から出てきたんだし、お母さんが作ってくれたものを食べて大きくなってきたのです。
よく、男はみんなマザコンなんて言います。
いくつになっても母親という存在は特別なもの。
リリー・フランキーさんも例外ではないようです。
むしろ例外ではないどころか、人よりもマザコン度は高いかもしれません。
そんな母親が老いて弱っていく姿を一緒に暮らしながら間近で見続けたリリー・フランキーさん。
横断歩道でお母さんと手を繋ぐシーンには涙が溢れます。
子どもの頃は、自分を心配してくれて繋がれていた母親の手が、時が経って逆の立場になる。
母親を心配して手を繋いだ時に感じることってどんなことなのだろうかと、想像せずにはいられませんでした。
この小説『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』にはちゃんとリリー・フランキーさんのオトン(お父さん)も登場しますよ。
オカン(お母さん)に比べれば出番は少ないですが、登場シーンにはいつも何ともいえない味があります。
世間的には、ほとんど家にいない、あまりよくできたお父さんでないことは確かなのですが、本を読んでいると憎めない魅力を持っています。
きっと小説を書いたリリーさん自身がお父さんのことも好きだったからだと思います。
小説の前半は微笑ましい、懐かしくて心がぬくもるような場面が多いです。
後半はジーンと目頭が熱くなる、涙がこぼれる場面が多いです。
「泣き顔を見られたくなかったら外で読むな」とまで言われたこの小説。
とにかく泣いてすっきりしたい人にもおすすめです。
母親の愛に涙が止まらない本!みんなにおすすめの小説
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』に描かれているのはリリー・フランキーさんと彼のお母さんのことです。
でも、きっと読んだらあなたとあなたのお母さんに繋がることがたくさん見つかるはずです。
本や小説には好みがありますが、この小説は誰にでもおすすめできる稀有な小説です。
ぜひ読んでみてください。
そしてこの小説を読んで、母親のありがたみを再確認したら、少しくらいは親孝行しましょう。
私も頑張ります!
<本データ>
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
リリー・フランキー
扶桑社
218ページ
2005年6月発売
本が苦手な人の読みやすさ★★★★★
おすすめ年代 10代~60代
おすすめ性別 どちらも
<著者プロフィール>
リリー・フランキー
1963年(昭和38年)福岡県生れ。イラストレーター、ライター、エッセイスト、小説家、デザイナー、演出家、俳優など様々な分野で多才に活躍。
自身初の長編小説『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』は2006年第3回本屋大賞受賞。
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