(出典:photo by Mac Photography ® © クリエイティブコモンズ)
恋愛に疲れた時に心を癒す小説ってどんな小説?
恋愛に疲れた時に心を癒す小説って、皆さんはどんな小説だと思いますか。
人によって様々だと思います。
恋愛とはまったく関係ない小説を読みたい人もいるでしょう。
笑える小説・泣ける小説・怖い小説・ドキドキする小説を読んで感情を紛らわせたい人もいるでしょう。
でもプロのライターである私はあえてそんな時こそ恋愛小説をおすすめします。
私はこれまでそうしてきました。
理由は三つあります。
一つ目の理由
恋愛に悩んでいるのは自分一人ではないのだという癒しがあるからです。
小説の中ではあるけれども、同じような悩みを抱えた人がどう立ち向かっていったのか、どう対処したのかが具体的なケースとして学べます。
もちろんそこに書いてあるのは小説ですから架空の出来事です。
実際に起こった出来事ではありません。作家の想像力の産物です。
しかし想像力は、これまで経験した事柄や感情から無縁ではいられません。
小説に書いてあることが実際にはありえない、あったらいいなという夢想であってさえ、本人の経験から生まれてくるものです。
これまでに見たり、聞いたりしてきたことからの影響を受けています。
むしろ想像力の発端は、作家の人生の中にあると言っても過言ではないでしょう。
小説を書いた人が叡智を絞って紡ぎ上げたストーリーから学べることは、読み手がその小説から何かを学ぼうとする姿勢がある限り必ずあるはずです。
二つ目の理由
恋愛について様々なことを感じたり考えたりしている今だからこそ学べることが多いからです。
恋愛に疲れたのは、きっとうまくいかない恋愛に悩んでいるからですよね。
疲れてしまうくらいだから、あなたは恋愛と真剣に向き合い様々なことを感じたり、考えたりしているはずです。
そんな時に恋愛小説を読めば、自分の恋愛を省みながら共感できることも多く、切実に多くのことを学べるはずです。
うまくいかない悩む恋愛を経験した今だからこそ心に響いてくるものがあります。
三つ目の理由
恋愛小説を読むことで自分の恋愛を客観視できるかもしれないからです。
あなたが恋愛に疲れたのは、あなたの恋愛だからです。
どんな人でも自分のことを客観的に見るのは難しいものです。
周囲の人から見れば、「あんな相手とは別れた方がいい」という相手でも、好きになると別れられないものです。
たとえば恋愛小説を読んでいて、自分と似たような恋愛だなと共感はしても、自分が現実の世界で経験している恋愛に比べれば、ずっと客観的に見れるはずです。
恋愛小説を読むことで、自分の恋愛を客観的に見ることができて、どうすればいいのかヒントを得られることもあります。
このような理由から、うまくいかない恋愛に疲れた時こそ恋愛小説を読むのに適していると私は思うのです。
前置きが長くなりました。
それでは、おすすめ大人の恋愛小説を紹介していきます。
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過去の恋愛とけじめをつけられない人におすすめ大人の恋愛小説『きいろいゾウ』西加奈子
西加奈子さん、すっかり有名な作家さんになりましたよね。
2014年の下半期には直木賞も受賞されました。
ふだん小説をあまり読まないという人も、『アメトーーク』の読書大好き芸人で又吉直樹さん、若林正恭さん、光浦靖子さんといった面々が西加奈子さんの小説をおすすめしていたり、宮迫博之さんが西加奈子さんの直木賞受賞作『サラバ!』を購入したりしているのを見た方も多いのでは。
(アメトーーク、毎回面白いですよね。私は高校野球大好き芸人なんかも大好きです。「エイサーーク」でも爆笑しました)
そんな西加奈子さんの3冊目の小説が『きいろいゾウ』です。
過去の恋愛とけじめをつけられない人におすすめ大人の恋愛小説『きいろいゾウ』あらすじ
この小説はほのぼのとした雰囲気から始まります。
若い夫婦が都会から移住してきて田舎暮らしを始めます。
夫は売れない小説家の無辜歩(むこ・あゆむ)、
妻は動物や植物と会話できる不思議系女子の妻利愛子(つまり・あいこ)。
二人は互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合います。
近所の人たちと交流しながら二人はちょっとしたトラブルにも巻き込まれますが、穏やかな田舎の時間が流れていきます。
読んでいると、恋愛に疲れた心が癒やされます。
しかしこのまま穏やかな暮らしは続きません。
ムコさんが昔お付き合いしていた女性から手紙が来るのです。
その女性はムコさんの背中に入った大きな鳥のタトゥーの秘密を握る人です。
このあたりから小説の雰囲気は一気に暗転し始めます。
夫婦でありながら、ムコもツマも互いの過去には触れずに暮らしてきました。
二人とも過去と決着をつけなければならない時が来たのでしょう。
小説の後半、二人はその向き合うべき過去と対峙します。
二人はどんな結末を迎えるのでしょう。
過去の恋愛とけじめをつけられない人におすすめ大人の恋愛小説『きいろいゾウ』共感ポイント
過去というのは厄介なものです。
経験の少ない若いうちは一つ一つの物事に心の振幅も大きく揺れやすく、記憶にも強く残りがちです。
ただでさえ思い出は美化されるうえに、感情も大きく動いていたあの頃の記憶は時がたつほど懐かしくなるものです。
しかし常に時は流れています。
人はないものねだりの生き物です。
隣の芝生が青く見えてしまいます。
失ってはじめてそばにいる人の大事さが分かる!などという幼稚さとはそろそろお別れすべき時です。
今あなたが手にしているものの素晴らしさに気づくべき時なのです。
過去を大事に抱え込んで、今そばにいる人を大事にできないのだとしたら何のための今なのでしょう。
その今だってどんどん古くなって、過去になって、いつか思い出になっていくのです。
有名な言葉の一つに、
「これからの人生で今が一番若い」という名言があります。
“ローマ帝国の学者カトーは八十歳を過ぎてからギリシャ語を習い始めたと言われています。
「その年になって、なぜそんなむずかしいことを勉強し始めたのか」と問われたカトーは、
「これからの人生で、今が一番若いからだ」と答えたそうです。”
(『「戦う自分」をつくる13の成功戦略』著者ジョン・C.マクスウェルより引用)
過去をなかったことにすることはできません。
無理やり忘れようとしている状態というのも、かえって意識していることになって不自然な状態です。
私も以前に、ある恋愛を無理やり忘れようとしていることがありました。
でも無理やり忘れようとしても、なかなか忘れられませんでした。
無理やり忘れようとしていることが、かえって忘れづらくしています。
どんな人だって過去や思い出を抱えて生きています。
過去があってこそ今のあなたです。
なかったことにする必要はありません。
ただし、今を過ごすのに弊害となる過去とはけじめをつけるべきでしょう。
弊害となる過去とはけじめをつけなければならないタイミングが自然と訪れるものです。
その時、逃げずにけじめを着けることが大事なのでしょう。
でも逃げないことは簡単ではありません。
なぜなら傷つく恐れがあるからです。
激しく傷ついてまでけじめを着けるくらいなら、胸の内のさざめきを抱え込んだまま一生を終えるという選択肢もあります。
選ぶのはあなた自身しかいません。
兎にも角にも、『きいろいゾウ』のムコとツマの二人は立ち向かっていきます。
まだ立ち向かうだけの若さというエネルギーがあるからかもしれません。
立ち向かった結果、二人がどうなったのかは読んでお確かめください。
<小説データ>
『きいろいゾウ』
西加奈子
小学館
426ページ
2006年3月発売
本が苦手な人の読みやすさ★★★★
おすすめ年代 10代~30代
おすすめ性別 どちらかといえば女性
<作者プロフィール>
西加奈子(ニシ・カナコ)
1977(昭和52)年イラン・テヘラン市生れの大阪育ち。2004(平成16)年『あおい』でデビュー。
代表作は『通天閣』(織田作之助賞大賞)、『ふくわらい』(河合隼雄物語賞)、『サラバ!』(直木賞)など。著書多数。
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不倫で疲れた人におすすめ大人の恋愛小説『国境の南、太陽の西』村上春樹
私の大好きな恋愛小説の一つです。
村上春樹さんの小説の中で、もっとも『ノルウェイの森』に雰囲気が近い小説だと思います。
『ノルウェイの森』が好きな人はきっと『国境の南、太陽の西』も気に入るでしょう。
逆に『ノルウェイの森』は自分には合わないよという方には、『国境の南、太陽の西』はおすすめしません。
『ノルウェイの森』の帯には、「100パーセントの恋愛小説」という村上春樹さんが書いたキャッチコピーがついてました。
『国境の南、太陽の西』も100パーセントの恋愛小説というキャッチコピーがついてもいい内容です。
ただし、この小説の恋愛は不倫ではありますが。
不倫で疲れた人におすすめ大人の恋愛小説『国境の南、太陽の西』あらすじ
『国境の南、太陽の西』がどんな恋愛小説かというと、
主人公である僕=はじめくんは30代半ば、妻と2人の娘がいて、仕事も順調で裕福。
一見、何の不満もなく順風満帆に暮らすナイスミドルです。
僕には小学生の頃に激しく憧れた島本さんという女の子がいました。
大人になった僕はその女の子と再会します。
僕の中でどうしても消えることのなかった憧れ、恋心が再びメラメラと燃え上がります。
島本さんにどうしようもなく惹かれていく感情を、家庭のある大人の僕は理性でねじ伏せようとします。
でも、本当に恋をしている時に理性で感情をねじ伏せるなどということは、大人でも難しいことです。
僕は葛藤しながらも島本さんにどんどん惹かれていきます。
島本さんへの恋心はどうなるのか?
家庭は崩壊してしまうのか?
主人公の僕は、どんな恋愛と人生を選ぶのでしょうか。
不倫で疲れた人におすすめ大人の恋愛小説『国境の南、太陽の西』共感ポイント
ただの不倫小説じゃないかと思われてしまいそうです。
確かにそのとおりではあります。
しかし村上春樹さんの小説はいつもそうですが、『ノルウェイの森』でいえばただの恋愛小説ではないし、『国境の南、太陽の西』もただの不倫小説ではありません。
島本さんの存在は純粋だった頃に憧れたものの象徴として描かれています。
私は結婚したことがありませんので、当然、不倫もしたことがありません。
でも多くの人が幼かった頃に激しく憧れた異性がいるはずです。
この小説を読んでいると、その純粋でまっすぐな強い憧れの気持ちを思い出します。
避けることのできない純粋でまっすぐな恋心です。
もしこの恋心を抱いた時に、すでに自分は結婚していたらどうなってしまうのだろう。
家庭という現実の生活との葛藤にも、とても共感します。
恋する辛さ、苦しさはみんな同じなのだとわかります。
物語の終盤には、いずみという主人公が高校の時に交際しひどく傷つけて別れた女性も登場します。
いずみは主人公が過去に傷つけた者の象徴として描かれています。
若さから来る無鉄砲さが必要以上にいずみを傷つけたのです。
こちらも少なくない人が、若い頃の無鉄砲さゆえに異性を傷つけた経験を持っているのではないでしょうか。
その傷つけた罪悪感、心の中に残る嫌な感情の手触りに共感します。
激しい憧れも、過剰に傷つけてしまうことも、若さゆえの無防備・無鉄砲が原因にあります。
この若さゆえの無防備・無鉄砲が引き起こしたことが、後年どう影響してくるのかをある状況下において実験しているような小説です。
あなたもこの恋愛小説を読めば、自分の中にある過去に憧れた人と、過去に傷つけた人を思わずにはいられないです。
それがどこかノスタルジーを生むのです。
懐かしく感じている自分に気づくのです。
懐かしく感じている自分がいることで、すでに何かが自分の中から失われていることに気づくのです。
私も含め、多くの人はそう感じるのではないかと思います。
多くの人の心は時間とともに鈍くなっていき(強くなっていき)回復していくのですが、ある種の人たちは時間とともに鋭くなっていき(弱っていき)、ゆっくり損なわれていくのだなと感じさせられる小説です。
村上春樹さんの小説には時間とともに傷が癒えていく人物ではなく、時間とともに傷が大きくなっていく人物が描かれることが多いです。
時間とともに傷が癒えるのではなく、傷口が少しずつ広がり損なわれていく人間は繊細でとても魅力的に映ります。
『ノルウェイの森』の直子やキズキのことが浮かびます。
時間とともに傷が癒えていかない人というのは、潔癖で自分のことを許せない人なのだろうと思います。
何かを失う自分を許せない、変わってしまう自分を許せない、こうありたい、こうでなければならない、そういう気持ちが強い人ほど時間とともに傷口が広がっていく、そんな気がします。
『国境の南、太陽の西』や『ノルウェイの森』を読むと、そんな繊細すぎる変わった人たち、特別な人たちの気持ちを追体験できます。
でも、みんな共感するところがあるはずです。
変わること、変わらないこと、どちらもどんな人でも経験していることだからです。
あなたにとっては簡単に変われたことでも、人によっては変われないこともあります。
それが致命的なポイントだと、『ノルウェイの森』の直子やキズキのようになるのです。
平穏な日常が、実は危ういバランスの中で成り立っているものだと村上春樹さんの小説はいつも思い出させてくれるようです。
恋愛とは何なのだろう、結婚とは何なのだろうと考えさせられます。
恋愛・結婚といった経験を通して、人間はどうなっていくのか。。。
私は特にラストシーン、主人公のはじめくんが妻の有紀子と自宅で話している場面が好きです。
この二人の会話が『国境の南、太陽の西』という恋愛小説における最も重要な何かを含んでいるという気がしてなりません。
<小説データ>
『国境の南、太陽の西』
村上春樹
講談社
294ページ
1992年10月発売
本が苦手な人の読みやすさ★★★
おすすめ年代 10代~50代
おすすめ性別 どちらかといえば男性
<作者プロフィール>
村上春樹(ムラカミ・ハルキ)
1949(昭和24)年京都市生れの兵庫県西宮市・芦屋市育ち。1979(昭和54)年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。
代表作は『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)など。著書多数。
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恋人と喧嘩してしまう人におすすめ大人の恋愛小説『グリンピース』(『熱帯魚』収)吉田修一
吉田修一さんの『グリンピース』は文藝春秋から出版された『熱帯魚』という本の中に収められた三編の短編小説のうちの一つです。
この『熱帯魚』という本は表紙が青くて、その青と黒い影のような絵がとてもきれいです。
この本を買った理由はこの表紙のデザインでした。
この本を読み進めていって気に入ったのが『グリンピース』です。
吉田修一さんの小説の中で私が一番好きな作品です。
伊坂幸太郎さんもこの小説のことが好きだそうです。
伊坂幸太郎さんと同じ小説が好きならと、自分の感覚に少し自信を持ちました。
恋人と喧嘩してしまう人におすすめ大人の恋愛小説『グリンピース』あらすじ
この『グリンピース』がどんな恋愛小説かというと、とにかく日常を描いています。
主人公はアラサー独身男性です。
世間一般的にはあまりいい人ではありません。
というか嫌な人です。
彼女と一緒に暮らしていますが、よく喧嘩をします。
けっこう勝手なことで怒り出します。
喧嘩すると、グリンピースを台所で彼女に投げつけたりもします。
喧嘩の後、彼女は家を出ていってしまいます。
主人公は貞操観念もありません。
友人の彼女をなんとかして口説こうとします。
友人の彼女は口説けるのか、喧嘩して家を出ていった彼女とはどうなるのか。
これから主人公はどんな暮らしをしていくのでしょうか。
恋人と喧嘩してしまう人におすすめ大人の恋愛小説『グリンピース』共感ポイント
主人公はひどい男です。
ひどい男なのですが、小説を読んでいてすがすがしいくらいに自分の理屈で動いており、価値観がはっきりしているので、嫌な奴だけど自分らしく生きている人だなあと思いました。
人と人が接する時の煩わしい感覚とか、ユーモアの感覚とか、共感するところもあり、少し面白おかしくもあります。
人と人の相性の良さの一つは、距離感の同じ相手なのだろうなと感じます。
快適な距離感が同じくらいというのは重要ですよね。
友人の彼女は口説けるのか。
喧嘩して家を出ていった彼女とはどうなるのか。
どこか主人公は投げやりに、行き当たりばったりに生きています。
退屈な日常におけるスパイスはどういった決着を迎えるのでしょう。
主人公にとっては退屈だから事件を起こしてやろうなどという意識はなく、こうしたことも含めて日常なので、しばらくは同じようなことを繰り返していくでしょう。
人の性(さが)みたいなものを考えてしまいます。
<小説データ>
『熱帯魚』
吉田修一
文藝春秋
221ページ
2001年1月発売
本が苦手な人の読みやすさ★★★★★
おすすめ年代 20代~40代
おすすめ性別 どちらかといえば男性
<作者プロフィール>
吉田修一(ヨシダ・シュウイチ)
1968(昭和43)年長崎県生れ。1997(平成9)年『最後の息子』で文學界新人賞を受賞しデビュー。
代表作は『パレード』(山本周五郎賞)、『パーク・ライフ』(芥川賞)、『悪人』(毎日出版文化賞、大佛次郎賞)など。著書多数。
おすすめ大人の恋愛小説ランキングどうでしたか?
恋愛に疲れた時に心を癒すおすすめの恋愛小説3つ紹介しました。
いずれも恋愛小説ですが、雰囲気はそれぞれ異なります。
男性と女性という違う生き物が同じ時間・空間をともに過ごそうとすると、どこかで摩擦が起こるんだなという気がします。
自分とは違う価値観の人と一緒に暮らしていくことによって生じる人間性の成長といったものもあるのでしょう。
どれか一つでもあなたの好みに合い、あなたを癒やすことのできる恋愛小説であることを願います。
もし今あなたが恋愛をしていて彼氏との悩みを抱えているなら、リフレッシュ法を紹介した記事があります。
↓
http://iiiyashi.com/022-2/
あんまり悩んでばかりでもいい恋愛はできませんので、たまにはリフレッシュしてください。
リフレッシュ法といえば、音楽を聴くのもおすすめです。
男性の低い声で癒されたいときにおすすめの歌を紹介したのが、
http://iiiyashi.com/023/
女性の声で癒されたい時におすすめの歌を紹介したのが、
http://iiiyashi.com/025/